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| 甘味に対する感受性とレプチン |
Leptin as a modulator of sweet taste sensitivities in mice K. Kawai et.al ; PNAS.97(20), 11044-11049, 2000 レプチンは脂肪細胞から分泌されるホルモンです。エネルギー消費を増大させて、摂食行動、脂肪蓄積を抑制することから、抗肥満因子として知られています。初めてその存在が明らかにされたときには、「肥満遺伝子の発見」と大きく取り上げられたのでご存知の方も多いでしょう。肥満を伴う糖尿病モデル動物であるdb/dbマウスは、レプチンレセプターに欠損があるためレプチンの働きが悪く、過食になることも有名です。しかし、甘味に対する感受性が高いことはあまり知られていません。今回は、レプチンと味覚の関係についての実験結果をご紹介します。 まず、正常マウスの腹腔にレプチンを投与すると、甘味の基質(スクロースとサッカリン)に対する味覚神経系(鼓索神経と舌咽神経)の反応は低下します。しかし、酸味、塩味、苦味には影響しませんでした。db/dbマウスではレプチンレセプターがないので、そのようなレプチンの作用はみられません。次に、味細胞を単離して細胞内電位の変化を調べると、レプチンによりK+が細胞内から細胞外に流出することが分かりました。つまり、レプチンが味細胞にあるレセプターに結合すると、細胞の活性を抑制して、脳に伝わる甘味インパルスも低下させるので、甘味に鈍感になったというのです。 甘味を感じるということは動物にとって重要なことです。なぜなら、甘味のある物質は生命の根本となる糖質エネルギーの基質となるからです。その遺伝子的特徴からdb/dbマウスは甘さを感じ続けることとなり、本能的に食欲が持続するため、過食から肥満になる裏づけの証明が出来るわけです。 舌はレプチンのターゲットとなる組織であり、レプチンはsweet-sensing modulatorとして摂食調節に関与している可能性があります。そして、db/dbマウスではレプチンのもつ甘味感受性の抑制システムが働かないので、正常マウスに比べて甘いものをより好む摂食行動があると結論づけています。 この論文は、「Leptin effects on taste may explain why diets fail」というタイトルでLancet(Vol.356, September 23, 2000)にも紹介されました。そのタイトルは、レプチンの甘味感受性システムの抑制作用は、ヒトがダイエットに失敗する根拠になるという、興味深いものです。というのも、ダイエットをして体脂肪の減少に伴って血中レプチン濃度も低下すると、逆に甘味に対する感受性が高まって、食べ物をよりおいしく感じてしまうため、ついつい食べ過ぎてリバウンドが起こりやすいのです。 (担当:河原裕美) ![]() 図1.レプチンと味覚感受性 NH4Cl;無味,NaCl;塩味,HCl;酸味,QHCl(=quinine・HCl);苦味 Suc(=Sucrose);甘味,Sac(=Saccharin);甘味 ![]() 図2.血漿レプチン濃度と甘味感受性 |