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脂肪酸とインスリン分泌

Free fatty acids regulate insulin secretion from pancreatic β cells through GPR40
Y.Itoh, et.al ; Nature 2003. Mar 13 ; 422(6928) 173-6

オレイン酸とリノール酸は膵臓β細胞に局在するGRP40のレセプターを介して、インスリン分泌を促進する作用があります。
糖尿病では、インスリンの作用不足で、糖および脂質の代謝異常が生じ、眼、腎臓、神経など多くの組織に影響を及ぼします。インスリンは血糖の上昇に反応して、膵臓のβ細胞から分泌されます。今回、ポイントとなる遊離脂肪酸(FFAs)は、食事と食事の間の空腹時に必要なエネルギー基質として組織に供給される栄養素であると同時に、インスリン分泌を含めたさまざまな細胞内反応に関与するシグナル分子です。FFAsは、初期のインスリン分泌を促進させますが、そのメカニズムには未だ不明な点が残されています。
筆者らはG-protein-coupled receptorのGRP40が、膵臓のβ細胞で特異的に発現していることに着目しました。このレセプターは、リガンドとなる物質が分かっていません。そこで、in vitro の実験を行ない、GRP40が長鎖のFFAsに対して特異的なレセプターとして機能していることを明らかにしました。長鎖のFFAsは、このGRP40を活性化して、膵臓β細胞からのインスリン分泌を増強させるのです。特に、オレイン酸(C16:1)とリノール酸(C18:2)は、ほかの脂肪酸に比べてその作用が強く、細胞外のグルコース濃度が低くても効果がありました。FFAsは、アルブミンと結合した形で組織に運ばれますが、FFAsのインスリン分泌促進作用は、アルブミンと結合していない脂肪酸のほうが強いことも分かりました。インスリン分泌に関与する細胞内シグナル伝達経路の重要な分子としてMAPキナーゼがあります。長鎖のFFAsがGRP40と結合すると、細胞内のカルシウム濃度を上昇させます。しかし、MAPキナーゼの阻害剤が存在下でも、インスリン分泌を促進したことから、MAPキナーゼが関与しない別の経路も考えられます。
今後、in vivoや細胞内シグナル伝達に関する研究に期待されますが、インスリン分泌のメカニズムと糖尿病治療に新たな方向性を与えます。この研究から、糖尿病の治療に重要な食事療法でも、摂取する脂肪の量だけでなく質の重要性も、浮き彫りにしていますね。             (担当:河原裕美)


図1.各脂肪酸刺激によるMIN6細胞からのインスリン分泌
Oleic;オレイン酸(C16:1)
 Linoleic;リノール酸(C18:2)
 α-Linolenic;α-リノレン酸(C18:3)
 γ-Linolenic;γ-リノレン酸(C18:3)
 Arachidonic;アラキドン酸(C20:4)
 DHA;ドコサヘキサエン酸(C22:6)
 ML;Methyl Linoleate
 Butyric;Butyric Acid(C4)


図2.脂肪酸刺激によるMIN6細胞からのインスリン分泌とグルコース濃度
 5.5mM glucose;約99mg/mL
 11mM glucose;約198mg/mL
 22mM glucose;約396mg/mL